曲に潜む、そのサウンド:「Drunk in Love」by Beyoncé
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曲に潜む、そのサウンド:「Drunk in Love」by Beyoncé

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 Roland TR-808 リズム・マシンは、楽曲制作において魅力的な特徴があることで知られています。スネアの鋭い音、バス・ドラムの丸みのある温かい響き、さらに数多くのリズム・サウンドが、脈打つように奏でられます。さらに808は、音楽の成功を夢見るプロデューサーが、それを実現するのにうってつけのキャンバスとなり得ます。

また、リズム・マシンは信頼できる相棒の一人となってくれます。熱い思いに応え、従順にその仕事をこなしてくれる808は、BeyoncéJay-Zによる2013年のヒット曲『Drunk In Love』でも使用されました。まさに傑作を生み出すために欠かせない立役者であることを証明しています。

Queen Bey on the Beach

著名な監督であるHype Williamsによって撮影された、この大ヒット曲の6分にわたるモノクロのミュージック・ビデオは、YouTubeで約5億6100万回の再生回数を記録しています。魅惑的なBeyoncéが浜辺で揺れるように踊り、その魅力がカメラを通して映し出されています。

“Drunk In Love”は、Queen BeeことBeyoncéとその夫Jay Zが、伝説的プロデューサーのTimbalandをはじめとする他のクリエイターたちと共に手がけた楽曲で、2013年12月のリリースと同時にBillboard Top 100で2位を記録しました。この曲は、2006年の『Déjà Vu』や2009年の『Crazy In Love』といった、2人による他のヒットシングルに続く作品です。

抑え込んだ愛

激しい感情を秘めながらも、“Drunk In Love”は控えめで抑えた表現で構成されています。ときに、最も深い愛は、燃えたぎる気持ちを抑え込むことによって表現されるでしょう。そのため音が最大限に盛り上がる箇所はほんの数回だけとなり、たとえば、Beyoncéが『Looove』と朗々歌い上げる瞬間です。808の鼓動に重なるその声は、まるで気心知れた誰かと一緒にいるかのような、親しみを感じさせます。

808は音のその力強さにもかかわらず、驚かせたり怖がらせたりするような役割ではありません。それどころか、このリズム・マシンは曲が求めるところに見事ハマってくれました。Beyoncéが浜辺に立ち、空に向かって拳を振り上げるとき、エネルギーの高まりを感じるでしょう。

曲の終盤、Jay Zが登場することで、より展開に勢いが加わります。彼はダイヤモンドをちらつかせ、リスナーを沸かせます。端的に“Drunk In Love”は、「808」と「欲望」という二つの要素が根底にあるのです。

これらの要素が“Drunk in Love”の魅力に大きく貢献しているのは間違いなく、実際、この曲は非常に人気を博し、数多くのリミックスも生まれました。その中のひとつが、Jay ZとBeyoncéの友人であるKanye Westによるバージョンです。この素晴らしいプロデューサーは、Roland TR-808に精通していることで知られており(代表作『808s & Heartbreak』を参照)、彼によるリミックスは、YouTubeで約650万回再生されています。

ドリーム・チームの努力

808のスネアが鳴るたびに、BeyoncéとJay-Zという超大物たちの情熱的な一面を垣間見るようです。この2人が舞う曲の骨格を作るために、プロデューサーのDetailは、「酔い」からインスピレーションを得たビートを、最初にBeyoncéに提案しました。

808のスネアが鳴るたびに、私たちは超大物たちの情熱的な一面を垣間見るようだ。

クリエイターたちが集まり、コンセプトに没頭して、その協力関係から“Drunk In Love”が生まれたのです。『ヒット曲を作ろうとしていたわけじゃないの。ただ楽しんでいただけ』とBeyoncéはNBCのインタビューで語っています。“Drunk In Love”はその後、2013年にiTunesでプロモーションなしにリリースされ、Beyoncéのセルフ・タイトルとなる5作目のアルバムに収録されました。

Photo by Pete Sekesan

このミュージック・ビデオで最も印象的なシーンのひとつは冒頭にあります。Beyoncéがプラスチック製のトロフィーを抱えて、ふらつきながら帰宅しています。それはミス・コンテストで勝ち取ったものかもしれないし、ボウリングの腕前の結果かもしれない。いずれにせよ、彼女は少し酔っているようで、トロフィーを揺らしながら、これから夫を探しに行くかのようです

もちろん、BeyoncéとJay-Zのクリエイティブなパートナーシップは今も続き、発展しています。彼らの絆がこれからも、私たちに力強く情熱的な音楽を贈り続けてくれることを願います。

 

Jake Uitti

Jake Uitti’s work appears in Interview, Vanity Fair, The Washington Post, American Songwriter, The Seattle Times and other publications. The son of Ivy League professors, Jake grew up amidst tomes of French literature, but soulful meals, compelling conversation, and thoughtful music are his true loves.