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TB-303:隠れた名曲選
Rush Hour Musicによるセレクション

Roland TB 303 Bass Lineがフィーチャーされた、知られざる名曲の数々。厳選されたRush Hour Musicのキュレーションよりご紹介します。

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ダンス・ミュージックの国際的な発信地であるアムステルダムの名門レーベル Rush Hour は、単純なカテゴリ分類から一線を画し、ジャンルや年代を横断するキュレーションが特徴です。1997年の創立以来、流通、実店舗など、さまざまな形態でも活動する彼らは、愛する音楽にフォーカスし、その活動は常に「衝動と信念」に基づいてきました。Carl Craigや KiNK のリリースから、ロンドン、パリ、ニューヨーク、東京、ベルリンでのイベントまで、Rush Hourは国際的なエレクトロニック・ミュージックのアンダーグラウンドを今も支え続けています。ここでは303 Dayを祝して、Rush Hourの共同創業者であるAntal Heitlager氏による特別なセレクションで、Roland TB-303 Bass Lineがフィーチャーされた、知られざる名曲の数々に触れてみましょう。 

Playlist

Make Some Room by Sade (1988)

Sadeによるアシッド。あのベースラインを、クロスオーバー曲へと昇華させたSadeチームの仕事が実に刺激的。繊細かつ的確なハードウェアの使いこなしが、彼女の音楽特有の空気感を生み出しつつ、どこかシカゴ・ハウスへのオマージュも感じさせる。1988年リリース。まさにB面ディグの楽しさを体現した作品。

I Wanna Look To The Stars by Sideral (1994)

私にとっては最近の発見だが、オリジナルは 1994 年にドイツのKlangレーベルからリリースされたもので、私たちの店の中古レコードの山を漁っているときに見つけた。入荷するレコードはほとんど全部チェックしているが、この曲を聴いた瞬間に完全に釘付けになった。後に、スペインのレーベルCanela En Surcoが2021年にこのアーティストの作品集を出していたことを知った。Sideralは、スペイン・バルセロナで人気のエレクトロニック・ミュージック・プロデューサーAlex Martinの別名義。

Rainbows Over Paradise by UR (1993)

ハウスとテクノを愛する者として、UR と書かれたレコードはすべて掘るものだ。彼らはデトロイト・テクノの本質そのもので、このB4のトラックはいっそう特別だ。1993 年のAcid Rain シリーズに収録されており、名曲 “Final Frontier” と同じ空間的でエモーショナルなシンセが使われている。2分間のジャムの中で徐々にテンポが上がっていく構成。何度もこの曲で夜を締めくくった。高揚させて、そして静かにフェードアウトしていく。そしてもちろん、アシッド・ベースラインは驚くほどキャッチーだ。

Dream 2 Science by Dream 2 Science (1990)

1990年にBen Cenacがプロデュースしたハウス作品「Dream 2 Science」のアシッド・ベースラインについて、Daniel Wangがどれだけインスピレーションを受けたかを語る動画がある。Ben CenacはSha-lorの“I Am In Love”やPush/Pullの“Bang the Drums”のプロデューサーでもあるが、最もよく知られているのは Newcleus 名義だ。そう、Jam on Revenge、“Computer Age”、“Space Is the Place” などを作ったあのグループのことだ。つまりこの曲は、80 年代末のニューヨーク、ヒップホップとハウスが交差する地点となる。TB‑303の使い方も素晴らしく、この特集にぴったりの1曲。彼の作品はどれも素晴らしいので、ぜひレパートリー全体を聴いてほしい。

Acid Reaction by Rude Futures (2025)

Motor City Drum Ensembleとしても知られるDanilo Plessowの作品。Inverse Cinematics期からの知り合いで、もう20年以上の付き合いがある。多くの人と同様、私たちも、デトロイトやシカゴから生まれる曲に思い焦がれていた。彼のルーツも明らかで、年が過ぎ、プロデューサーとして大きく成長している。

このレコードは、現在の地政学的状況に反応して作られており、愛、侵略、ダークなエネルギーが混在する。James “Jack Rabbit” Martinのような昔の制作スタイルの引用とも聴こえるが、アプローチは現代的。過去と現在に片足ずつ置いたモダン・アシッド。

Dancing Ghost by CTI (1984)

Chris & Coseyは1981年結成。Throbbing Gristleが解散し、そのうち2人から生まれたユニットで、インダストリアル/シンセ/エレクトロニック作品を数多く制作した。“Dancing Ghost”は彼らがCTI名義でリリースした1984 年のアルバム Elemental 7 からの 1 曲。

個人的には、2012年頃にMinimal Waveが2本の Minimal Wave Tapes コンピレーションをリリースした頃、この手のサウンドにのめり込んだ。アムステルダムで育ち、シカゴ・ハウスの影響を強く受けていたため、イタロ・ディスコにも自然と引き寄せられた。

DAFやLiaisons Dangereusesも同様で、冒険的なシカゴのDJたちがプレイしたことで、このサウンドはふたたびヨーロッパへと戻ってきた。そうした流れの中、この曲はエレクトロニック・ミュージックのパイオニアによる実験的なアシッドのように感じる。

Sexual Behavior by Deep Contest (1993)

オランダでは、多くのエレクトロニック・ミュージック愛好家がDJ Dimitriの影響を受けている。彼は常にデトロイトやシカゴのサウンドを推し続けていた。当時、Derrick Mayが、絶好調だったDimitriに自分のプレイ時間を譲るほどだったという話もある。

デトロイトのレコード・ショップRecord Timeには、同地のタイガー・スタジアムでKevin Saunderson、Juan Atkins、Derrick May、DJ Dimitriが出演するパーティーのフライヤーが貼ってあった。それだけ彼がアムステルダムだけでなく、世界的に重要な存在だったということを物語っている。

1995 年ある夜、Chemistryというパーティーでの彼のプレイは本当にすばらしかった。Chance McDermott、Eddie “Flashin” Fowlkes、Ken Ishii & Luke Slaterといたアーティストのトラックを次々と披露し、この曲を流した。当時はShazamなんてなく、サウンドとメロディの記憶を頼りに、これらすべての曲を見つけ出した。
このレコードもそのひとつで、DJ DeepとLudovic Navarreのプロジェクト、Deep Contestの作品。Laurent Garnierのような作風も感じられるサウンド。まさにテクノの代名詞ともいえる作品、そしてアシッド・ベースラインも特徴的。

Opus 303 by Le Mystere (1990)

これはベルギーのニュー・ビート。私はリアルタイムでは経験していないが、遡ってディグする中で発見した。ベルギーやその周辺でエレクトロニック・ミュージックが本格的に広がった時期で、重要なジャンルといえる。当時のトラックはアムステルダムでハウスのダンス・フロアでもよくプレイされていた。Eric Nouhanのハウス作品にもこの影響があると思う。典型的なアシッド・ベースラインを持つ、スロー・テンポのエレクトロニック・ジャム。オリジナルは1990年、ベルギーの伝説的レーベルBUZZからリリース。

Museum from Minimal Nation by Robert Hood (1994)

エレクトロニック・ミュージックに興味を持ち始めた頃、Carl CraigやMasters at Work の作品を主に買っていた。その後、デトロイト・テクノのより深い側面を学びはじめた。

例えば、レコード・ショップRhythm Importの元スタッフNitanが、Drexciya を教えてくれた。店に入った瞬間を今も覚えている。客は誰もおらず、彼は “このレコードを聴いてみるといいよ” とDeep Sea Dwellerを紹介してくれた。

私たちが店を構えて間もなく、NitanはRush Hourの店舗で働き、時が経つにつれ、彼の関心はストリート・フットボールの記録や似たプロジェクトへ移っていった。長い期間を経て、彼は店の仕事を辞め、自身のレコードを手放すことになった。そのコレクションの中にRobert Hoodの Minimal Nation の非常にレアな盤があった。この青いテスト・プレス盤を知っているかな?そこには追加トラックが収録されている。

とはいえ、私がいつもメインに頼れるトラックは “Museum” だった。この作品こそ、後にヨーロッパで“ミニマル”と呼ばれるジャンルを引っ張った原点だと思う。
私の見解では、Robert HoodとJeff Millsがまさにその第一人者。そしてこの作品は1994年発表のオリジナル盤で、とにかく最高の曲。

Acid In The House by Miss Nicky Trax (1988)

私はかつてThe Waakzaamheidというクラブの近くに住んでいた。兄がそこで照明を担当していて、働き始めたのは17〜18歳、その時私は13〜14歳だった。16歳になった途端、ハウス・ミュージックにハマった。最初は何も知らなかったが、1 年もすると完全に夢中になっていた。その後、そのクラブでクローク・ルームの仕事をはじめ、グラスの回収やフライヤーの配布を担当していた。

そのころ、数多くの刺激的な国内外DJのプレイを聞く機会があった。Derrick May、DJ Rush、Alton Miller、Darryl Wynn、Dave Lee、Jedi Knights、Aubrey、Kevin Saunderson など、数えきれないほどだ。彼らはデトロイト・テクノや、シカゴ・ハウス、ニューヨーク・ハウスなどをプレイしていた。そのクラブからリリースされるテープもよく聴いた。Miss Nicky Trax(ベルギーのニュー・ビート)も、それらテープに収録されていたアーティストの1人。

Antal Heitlager

Antal is CEO and co-founder of Rush Hour Music, a label, mailorder, event promotion hub, and record store based in Amsterdam.