Rolandは、長年にわたり電子ピアノにおける究極の演奏性とサウンドを実現するために取り組んできました。
この取り組みは1972年にリリースしたエレクトリック・ピアノEP-30から始まっています。1986年、RD-1000の登場は音楽界に変革をもたらし、Rick Wakeman, Ed Sheeran,そしてElton Johnなどの著名なミュージシャンに愛用されました。RDの革新的なスピリットは、40年を経た現在もRD-2000 EX、RD-88 EX、RD-08へと受け継がれています。それでは、RDシリーズがいかにして現在地へ到達したのか、プロ・ミュージシャンに愛され続ける理由はどこにあるのか。この秀逸なステージ・ピアノの歴史を紐解いていきましょう。
新境地 – 新たなるサウンド
シンセサイザーの黎明期、リアルなピアノ・サウンドを再現することは非常に困難でした。1986年に発売したRD-1000は、SAS(Structured Adaptive Synthesis)を導入することにより、この壁を乗り越えました。このテクノロジーは、さまざまなピッチや明るさ、弦振動の相互作用による調和など、キーボードの特性を30のゾーンに分割することにより、リアルな表現を実現。この革新技術は、電子ピアノのリアリズムにおいて、大きな進歩となりました。
RD-1000の木製88鍵ウェイテッド・キーボードは、自然な演奏感を実現。3バンドEQやコーラス、トレモロ・エフェクトを搭載し、エレクトリック・ピアノのサウンドもリアルにコントロールできるようになりました。また、RD-1000には3種類のキータッチ設定があり、ソフト、ミディアム、ハードから自分に合ったタッチ感に設定可能。そしてRD-1000のモジュール・バージョンであるMKS-20は、Rolandの名機として世界中のスタジオで定番機材となっていきます。
RD-1000のボイス・プリザーブ(保存)機能により、さまざまなサウンドに簡単にアクセスできるようになり、ライブ・プレイヤーにとっては大きなメリットとなりました。ボイス・プリザーブを有効にすると、ボイスは選択できましたが、一旦演奏を止めるか、ダンパーペダルを離すまで変更はされませんでした。
「RD-1000のボイス・プリザーブ機能により、さまざまなサウンドに簡単にアクセスできるようになり、ライブ・プレイヤーにとっては大きなメリットとなりました。」
リアリティの追求
1987年、RDシリーズとしてRD-250とRD-300が登場。これらのモデルは、重りを使用してピアノ・ハンマーが上下する感覚を再現した、新しいキーボード・アクションを特徴としていました。RDシリーズは歴代モデルを通じて人気が高く、これらのエレクトリック・ピアノのサウンドは、初期のハウス・ミュージックでも頻繁に使用されました。また、RD-1000は、Elton Johnのライブ・パフォーマンスに欠かせないピアノとしても有名です。
1994年、RD-500が登場します。デジタル・キーボードの開発技術を応用したRD-500は、RD-1000の8つのプリセットから大幅な進歩を遂げ121のサウンド・バリエーションを保持できるようになりました。また、ポリフォニー数を増やし、リアルな演奏を実現するため、ハンマー・アクション・キーボードを採用、前モデルの88鍵に比べ軽量化も実現しました。
RD-500は、ライブ・パフォーマンス・キーボードというコンセプトに基づき、ステージ用に設計した新機能を追加、特にTX(トランスミット)は重要でした。この機能により、内部サウンドの設定とは関係なく、MIDI経由で送信するバンクの作成が可能となりました。TXパートと内部サウンドを使用することで、4ボイスのコントロールと同時にMIDI制御を実現。RD-500をマスター・キーボードとして使用して、複雑なパート構成やパフォーマンスが可能となりました。
「RD-500には、エンベロープを調整してさまざまなレイヤーをデチューンする機能や、調整可能なピッチベンド・レバーなど、Rolandシンセサイザーで定評のあるいくつかの機能も組み込まれています。」
RD-500には、エンベロープを調整してさまざまなレイヤーをデチューンする機能や、調整可能なピッチベンド・レバーなど、Rolandシンセサイザーで定評のあるいくつかの機能も組み込まれています。
ハンマー・アクション
1997年、RD-600を発売。RDシリーズの代名詞であるピアノのリアリズムをさらに洗練させ、当時最もリアルな演奏性を備えたPA-4ハンマー・アクションを搭載しました。RD-600には、A-90/A-70とJV-80用にそれぞれ開発された、VE-RD1とSR-JV80拡張ボードから厳選したサウンドを含む、拡張サウンドも含まれていました。
さらに、RD-600は64音のポリフォニーと16パートを備え、複数のボイス・コントロールを強化。パッチごとに設定可能なエフェクトがプリインストールされており、プレイヤーはエフェクトを入れた瞬間に、ライブ・パフォーマンスで即戦力になることが確信できるものでした。
1999年、低価格帯のRDモデルであるRD-100を発表しました。この手頃な価格の88鍵ハンマーアクション・キーボードは、独立したMIDI TXセクション機能の無い、スプリットやレイヤーが可能な9種類の高品位なRDサウンドを備えていました。
「2001年、RD-700の登場によりピアノのリアリズムは次のステージへと到達しました。64MBのステレオ・サンプリング・ウェーブ・メモリーには、新たなピアノを始めRolandの高品位アな楽器サウンドのコレクションが収録されました。」
レジェンドの進化
2001年、RD-700の登場によりピアノのリアリズムは次のステージへと到達しました。
64MBのステレオ・サンプリング・ウェーブ・メモリーには、新たなピアノを始めRolandの高品位な楽器サウンドのコレクションを収録しました。また、JVやXVシリーズのような拡張ボードにも対応。2つのSRXスロットによりライブラリが3倍になり、カスタマイズされたサウンド・セットを実現しました。また、RD-700は幅広いリズム・コレクションと、ギターのストラミングを含む45種類のスタイルを備えたアルペジエーターを搭載しました。
同年、RD-100をアップデートし、RD-150は、RD-700の新機能を取り入れ、驚くほどリアルなピアノ・サウンドを実現しました。RD-700はRD-700SX、RD-700GX、RD-700NXと幾度も進化を遂げ、RDの外観とパフォーマンスのしやすさを維持しながら、機能を拡張していきました。
SuperNATURAL の夜明け
RD-700GXは、SuperNATURALピアノ・サウンド・エンジンを搭載し、演奏の解像度を飛躍的に向上させました。それ以前のモデルでは、異なるサンプルを再生し、そのサンプル間のピッチを調整するコンピューター・アルゴリズムを組み合わせることで、電子ピアノのベースとなるサウンドを生成していました。SuperNATURALエンジンでは、すべてのキーに個別のサンプル・セットを使用し、各ノートに16,000段階ものレベルを表現する動的なアルゴリズムにより、それまでの方法では想像できないほどスムーズなレスポンスを実現しました。
「RD-700GXは、SuperNATURALピアノ・サウンド・エンジンを搭載し、演奏の解像度を飛躍的に向上させました」
Perfect Harmony
RD-700GXでは、アコースティック・ピアノの演奏性を再現したPHA-IIアイボリーフィール・キーボードの搭載も革新的な進歩となりました。アコースティック・ピアノを弾くと、ハンマーが弦に当たる際にわずかなクリック音がします。Rolandではこれをエスケープメントと呼んでいます。
独自の素材を使用したアイボリーフィール・キーボードは、本物の象牙のような触り心地を実現しました。つまり古いアコースティック・ピアノに使用されていた象牙鍵盤のような触感です。これにより、暑さで汗がにじむようなステージ環境でも、リアルで滑りにくい打鍵感で演奏を楽しむことができました。
RD-700NXとRD-300NXの登場により、キーボード・アクションはさらに発展を遂げます。PHA-IIIアイボリーフィール・キーボードは、3つの独立したセンサーにより、標準的なセンサーの100倍の速さで反応。ミュージシャンの演奏を細部まで正確に表現することに成功しました。 また、iPadアプリNX EDITORにより、演奏するステージの環境に応じて、これまで以上に簡単にカスタマイズが可能となりました。50種類の新しいシンセ系サウンドが含まれ、各パートのスプリット、レイヤー、エフェクトなどを簡単かつ視覚的に設定することができました。
「アコースティック・ピアノとエレクトリック・ピアノ用のデュアル・サウンド・エンジンと、優れたアンサンブル・サウンドを備えたRD-2000は、革新的なインターフェースによりステージ・ピアノの可能性を大きく広げました」
もう一つの飛躍
2014年、RDシリーズはRD-800でさらなる飛躍を遂げます。RD-800は、これまでよりも洗練された外観と軽量設計による優れた可搬性を備え、ツアー・ミュージシャンに支持されました。高品位なPHA-4アクション・キーボードは、アイボリーフィール(白鍵)とエボニーフィール(黒鍵)、および高解像度なセンシング・テクノロジーを搭載し、アコースティック・ピアノの演奏性をさらに高めることに成功しました。
ユニークでパワフルな「TONE COLOR」ノブは、簡単にサウンドのキャラクターを一変させることができ、各カテゴリーで最適化されています。たとえば、エレクトリック・ピアノでは、2つのクラシックなサウンドを切り替えながら、最適なブレンドを作り出すことが可能です。
The RD-2000: A Piano Odyssey
アコースティック・ピアノとエレクトリック・ピアノ用のデュアル・サウンド・エンジンと、優れたアンサンブル・サウンドを備えたRD-2000は、革新的なインターフェースによりステージ・ピアノの可能性を大きく広げました。2系統の拡張スロットによりサウンドの追加が可能となり、エスケープメントを備えたPHA-50プログレッシブ・ハンマーアクション・キーボードは、秀逸な演奏性を実現。また、ソフトウェアや外部モジュールのマスター・コントローラーとしても最適でした。
この革新的なキーボードは、木材とモールド材を組み合わせて作られたハイブリッド・キー構造により、繊細なフィーリングと頑丈な耐久性を兼ね備えています。フル・ポリフォニーや、60年代、70年代、80年代のクラシックなエレクトリック・ピアノの搭載に加えて、往年のRD-1000とMKS-20を本格的に再現したサウンドはRD-2000の大きな特徴でした。
「RD-2000 EXは、Rolandのプレミアム・グランド・ピアノ・モデルと同じPHA-50キーボードを搭載し、ハンマー・アクションやエスケープメント、そしてアコースティック・ピアノの演奏感と耐久性を両立させる、独自のハイブリッド・ウッド/モールド・キーを採用しています」
EXファクター
そして2024年、ステージ・ピアノRD-2000 EXとRD-88 EX 、RD-08がRDファミリーに新たに加わりました。RD-2000 EXは、Rolandのプレミアム・グランド・ピアノ・モデルと同じPHA-50キーボードを搭載し、ハンマー・アクションやエスケープメント、そしてアコースティック・ピアノの演奏感と耐久性を両立させる、独自のハイブリッド・ウッド/モールド・キーを採用しています。RD-88 EXとRD-08は、どちらもPHA-4キーボードを採用することで、軽量化と驚異的なプレイアビリティを兼ね備え、優れた演奏性と可搬性の両立を実現しました。
これらのステージ・ピアノは、これまでのRDの軌跡を基盤としながら、最新のPiano ExpansionやRoland Cloudとの連携を実現。RD-2000、RD-88、RD-08のUpgradeには、V-PianoやSuperNATURALのExpansion、Wave Expansionなど、豊富なオプションが含まれています。
長年にわたるライブ・パフォーマンスの歴史からの学びが、レイアウトから利便性までRDのあらゆるデザインに反映されています。
これらは、数十年にわたり積み上げてきた技術の集大成です。
今後も最新のサウンドや機能の追加により、RDシリーズの卓越したピアノ表現とステージでの信頼性は向上し続けていきます。
RDの軌跡はこれからも続いていきます。