楽曲とサウンドの舞台裏 a-ha「Take On Me」
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楽曲とサウンドの舞台裏 a-ha「Take On Me」

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1980年代の欧米カルチャーというと、肩パッド効いたジャケット、バック・トゥ・ザ・フューチャー、トップガンなどのヒット映画、MTVの流行などを思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか? そんな中、80年代の音楽シーンを思い起こすと、ひとつのサウンドが思い浮かびます。 a-haのヒットシングル”Take On Me”の「あのサウンド」です。

すでに今みなさんの頭の中に、あの特徴的なシンセのイントロが聞こえているかもしれません。この曲は1985年にビルボード・ヒット100で27週間チャートインされていました。象徴的な鉛筆スケッチのミュージックビデオも印象深く、12か国でシングルチャート1位を獲得しました。そんな名曲”Take On Me”は、懐かしさと共に新しい発見を呼び起こし、今でも多くのミュージシャンや愛好家にカバーされ続けています

曲やフレーズを聴いただけで、当時の光景をはっきりと想い出すことがあります。 この名曲”Take On Me”にまつわる様々なストーリーは、ローランドJUNO-60の存在もさることながら、我々の想像を超える奥深い物語から構成されます。

この物語の序章は、キーボーディストであるマグネ・フルホルメンが10代だった頃にまで遡ります。2014年のインタビューによると、フルホルメンが15歳のときに、あのキャッチーなシンセのリフを思いつき、これをいつか発表したいと考えていたそうです。しかし、後のa-haメンバー、ポール・ワークターと一緒に結成したバンド”Bridges”では、そのフレーズを発表する機会は訪れませんでした。

「モートン・ハルケットが壁に身を投げ、漫画を抜け出て実世界へジャンプする映像は、あの印象的なシンセリフと相まって大きなインパクトを与えた」

「あのシンセ・リフは、なんとなくチューインガムみたいに聞こえる、と思われてたんだ」と、フルホルメンは語ります。当時、バンドの方向性は「60年代のサイケデリック」と設定されており、そんなメンバーの耳にあのキャッチーなシンセ・リフは「“ジューシーフルーツ”のコマーシャルのように響いた」と。 

Bridgesは、この曲を「ミス・エリー」と名付けました。 が、結局不採用となった当時の音源を今でもYouTubeで聴くことができます。 ここでは、ギターサウンドが楽曲のコアを形成し、あの馴染み深いシンセメロディーには、シンバルのクラッシュがレイヤーされ、少し引っ込んだポジションをとっています。また、サビのメロディーも現在のものとは大きく異なります。この音源は完全に方向感覚を見失っており、その後、現在の「Take On Me」最終構成になるまで、実に3年の月日を費やすことになります。 

Bridgesのサイコ・パンク・プロジェクトが解散した後、フルホルメンとワークターはふたりで活動を継続し、その後、ボーカルのモートン・ハルケット加入により、新ユニット「a-ha」を結成します。ハルケットのフレッシュな歌詞と独特の3オクターブの声域は、このパズルにおける最後のピースとなりました。

Photo by Sheila Rock, Creative Commons

“Take On Me”のデモテープは、ワーナーブラザーズを驚かせました。 結果、ワーナーとa-haは正式契約を交わし、最大の投資をしていくことになります。 これは信じられないほど偶然でした。 しかし、本当に成功を手にするまで、この後さらに1年のレコーディングと3回のリリースが必要でした。

トニー・マンスフィールドのプロデュースによる最初のレコーディングは無機質過ぎて、国際的なマーケットで注目されることはありませんでした。その後バンドは、アラン・ターニーをプロデューサーに迎え再出発します。ターニーのスタジオでは、Roland JUNO-60を使用したセッションが行われ、ここであの著名な「シンセ・リフ」が完成し、これが名曲”Take On Me”に、他に変えがたい魅力を注ぎ込むことになります。

「ポールとマグス、二人とも非常に優れたプレイヤーだった」とターニーは2011年のインタビューで振り返ります。「彼らはとてもエネルギッシュだったし、演奏もとても良かった。私は主にJUNOをコントロールし、最終的にはとても雰囲気のあるライブレコーディングができたと思っている。」

このレコーディングを通じて、あの誰もが聴いたことのある『人気サウンド』が誕生します。 ところが、この段階では、伝説はまだ封印されており、2回目のリリースはまだ成功とは言えませんでした。そしてその後、3度目の挑戦で、スティーブ・バロン監督によるあの革新的なミュージックビデオが曲の魅力を倍増させることになります。当時最先端の”ロトスコープ”という鉛筆スケッチの映像技術を使用して、アニメーターは各フレームをトレースし、その特徴的なスケッチブック・スタイルの斬新な映像を完成させました。

「彼らはアラン・ターニーのスタジオで、JUNO-60を使ったキャッチーな音の魔法を加え楽曲を仕上げました。」

実際にはトラックが完了するまでに更に半年の月日を費やしましたが、シングルが発表されてから、MTVのインターナショナル・チャートでトップに君臨するまではあっという間でした。 素晴らしい楽曲に加え、コミックブック仕立ての映像とそのストーリーも話題となりました。 ボーカルのハーケットは、共演したヒロイン役バンティ・ベイリーと実生活でも恋愛をすることになりました。漫画の中で彼が何度も壁に身をぶつけながら、ヒロインの待つ現実の世界へとジャンプする場面は、曲のテーマであるシンセ・フレーズと相まって印象的なシーンとなりました。

このクリップは6つのMTV ビデオ・ミュージック・アワードを獲得し、これまでにYouTubeで12億回以上再生されています。 ピットブルとクリスティーナ・アギレラが、楽曲をサンプリングし、ウィーザーと他の約80人が曲をカバーしています。それは世代の音であり、真のクラシックと言えます。”Take On Me”の成功の裏に隠されたストーリーは「挑戦を諦めるな=七転び八起き」という昔の諺がよく似合います。

Kat Bein

Kat is a music and culture journalist with a decade of digital and print experience and a career emphasis in electronic dance. Bylines include Billboard Dance, Spin, MTV News, Discogs, Mixmag, Miami New Times and more.