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Roland Engineering: Aerophone Brisa開発の舞台裏

Aerophone Brisaの開発チームが、最新モデルのその能力と可能性について語る。

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2016年の登場以来、ローランドのエアロフォンシリーズは、演奏者に新しい音楽表現のアプローチを提供してきました。その結果、管楽器の可能性が広がりました。Aerophone Brisaは、成長を続けるエアロフォンシリーズの進化形であり、フルート奏者やその他の音楽家にも対応することで、シリーズの幅をさらに広げています。Aerophone Brisa開発チームが、エアロフォン・ファミリーの最新モデルであるBrisaのその力と可能性について、いくつかの質問に答えてくれました。

 

新しい風

ローランドが、伝統的なアコースティックフルートのスタイルとキィ配列を持つ電子管楽器を開発することを決めたきっかけは何だったのでしょうか?  

開発にあたり、いくつかの調査から着想を得ました。まず、管楽器市場を調査したところ、フルートには非常に大きな市場があり、世界中に多くの奏者がいることが分かりました。そこで、すでに大勢いらっしゃるフルート奏者の皆様に、さらに音楽表現の幅を広げていただくことはできないかと考えたのが一つ目のきっかけです。

次に、「これから始めてみたい憧れの楽器」についても調査したところ、フルートは常に上位にランクインすることが分かりました。その一方で、フルートは構造上、安定して音を出すこと自体が非常に難しい楽器でもあります。この「憧れの楽器であるにもかかわらず、演奏のハードルが高い」という点に着目し、その障壁を少しでも低くできないかと考えました。

最後に、フルートという楽器が持つ「美しさ」です。楽器自体の造形美はもちろん、演奏している姿もまた美しい。この美しい楽器を、より多くの方にかっこよく演奏してもらいたい、という想いも開発の動機となりました。

Aerophone Brisa team

"フルートという楽器が持つ「美しさ」。楽器自体の造形美はもちろん、演奏している姿もまた美しい。"

フルート、トランペット、そして基本設定となるBrisaモードなど、さまざまな運指モードを開発するにあたって、どのようなプロセスがありましたか?

フルートは音を出すことの難しさに加え、独特の運指も演奏のハードルになっています。そこで、リコーダーやサックスの運指に慣れている方はもちろん、金管楽器奏者の方にとって馴染み深いトランペットの運指、そしてもちろんフルート奏者のための運指モードも搭載しました。一人でも多くの方に演奏する楽しさを味わっていただきたい、という想いから複数の運指モードを用意しました。

過去のエアロフォンシリーズとは違うものにしなければならないという点はありましたか?

はい、明確にありました。それは、フルートが持つ美しいデザインと演奏性を実現するための「細いボディ」と「軽さ」、そしてその演奏性を再現するための「新しいキィ構造」です。これらは開発当初から不可欠な要素だと考えていました。

アーティストとの協働は、Aerophone Brisaの開発プロセスにどのような影響を与えましたか?

この楽器の開発には、世界中の多くのアーティストにご協力いただきました。フルート奏者に限らず、様々な管楽器奏者の皆様が非常に強い興味を示してくださり、数多くの素晴らしいご意見を頂戴しました。楽器を持った際の重量バランス、キィのレイアウト、息を吹き込んだ時の反応性、そして全体的な演奏のしやすさなど、そのアイデアは多岐にわたりました。また、皆さんとの対話を通じて、楽器の「美しさ」が演奏へのモチベーションを大きく向上させるということも改めて認識させられました。

名前の由来

理想の名前を考案するのに苦戦しましたか?    

はい、ネーミングは非常に慎重に進めました。世界中のクールな言葉、楽器や動植物など自然に関する言葉など、様々な候補を集めました。しかし、同じ言葉でも国によってニュアンスが大きく異なるため、様々な国のスタッフにも意見を求め、どの国の方が聞いても「クールだ」と感じてもらえる名前を追求しました。

Aerophone Brisa独自の吹き口を開発するプロセスについて教えてください。   

フルート特有のオクターブ奏法をデジタルで自然に表現するために、様々な試行錯誤を繰り返しました。オクターブ奏が可能なことはもちろんですが、それ自体が演奏の難しさにつながらないよう、シンプルに演奏できることを目指しました。構造が異なるため、アコースティックのフルートと全く同じ奏法ではありませんが、少し慣れていただければ、同様の感覚で演奏することができると思います。

"ネーミングは非常に慎重に進めました。世界中のクールな言葉、楽器や自然に関わる言葉など、様々な候補を集めました"

Aerohone Brisaの外観やキィ配列などを設計するうえで、どのような課題がありましたか?

やはり、フルートのような細く美しいボディを実現することが最大の課題でした。この細い筐体の中に、理想のキィ構造を組み込むことにも困難が伴いました。かといって、音源や音色のクオリティに妥協はできませんから、必要な電子部品やハードウェアをすべて内部に収めるための設計には非常に苦労しました。

モーションセンサーの感度は、演奏体験をどのように向上させますか?

モーションセンサーは、Aerophone Pro (AE-30)で初めて搭載されましたが、Aerophone Brisaではその演奏性がさらに自然なものへと進化しています。多くの音色では、楽器の先端を少し上げることで、より深いビブラートをかけることができ、直感的で表現力豊かな演奏が可能になります。

ドローン機能、音色、エアロフォン

ハーモニーやドローン音を加えられる機能は、Aerophone Brisaならではの特徴です。この機能はどのようにして生まれたのですか?

実はハーモニー機能自体は、初代のAerophone (AE-10)から搭載されていました。それをスケールに合わせて演奏できする「インテリジェント・ハーモニー」として進化させ、初めて搭載したのがAerophone Pro (AE-30)です。単音しか出せない管楽器でハーモニーを奏でることは、多くの管楽器奏者にとっての夢であり、その夢を実現したいという想いが開発の背景にあります。

ドローン機能も同様に、AE-30で初めて搭載されました。ドローンはバグパイプなど多くの民族楽器で使われる奏法です。Aerophone シリーズは非常に多くの民族楽器の音色を搭載しているのが特徴ですが、それらの楽器をリアルに演奏する上で、ドローン機能は不可欠な要素です。

SuperNATURAL Windsは新しい音源ですが、これまでのエアロフォンの音源と比べて、どのような点にAerophone Brisaならではの独自性があるのか教えていただけますか?

従来のSuperNATURALアコースティック音源も、ローランドのフラッグシップシンセサイザーに搭載されているZEN-Core音源も、それぞれが最高峰の素晴らしい音源です。ただ、SuperNATURALアコースティックは、元々キーボードでの演奏を前提に作られていました。

どちらが優れているということではありません。今回は、ブレスセンサーをはじめとする管楽器ならではの各種センサーとの連携を徹底的に突き詰め、息を吹き込んで演奏した際に、より自然でダイレクトな演奏感が得られるよう、音源のチューニングをゼロから見直しました。その結果として完成したのが、この SuperNATURAL Winds 音源です。

"多くのアイデアは、実在する様々なアコースティック楽器から得ています。各楽器が持つユニークな奏法や特徴を、エアロフォンで再現できないかと考えたのがきっかけです。"

いくつかの音色には隠れた機能が含まれていますが、それらのアイデアはどのようにして生まれたのですか?

多くのアイデアは、実在する様々なアコースティック楽器から得ています。例えば、日本の尺八には「むら息」のような独特の奏法がありますし、バグパイプのような民族楽器の多くはドローン音を鳴らします。ビブラートも管楽器ならではの表現です。そうした各楽器が持つユニークな奏法や特徴を、エアロフォンで再現できないかと考えたのがきっかけです。

 

Aerophone Brisaを、実際のどのような場面や用途で活用してほしいと考えていますか?Aerophone Brisaの恩恵を受けるのは、どのような人たちでしょうか?

プロの演奏家がステージで華麗なパフォーマンスを披露する姿はもちろん見てみたいですし、同時に、これまで全く管楽器に触れたことのない初心者の方が、初めて音を出す喜びを感じている姿も見てみたいです。そして何より、私たち開発者の想像もつかないような自由な発想で、この楽器を楽しんで使ってくださるのを見るのが一番の楽しみです。

Ari Rosenschein

Ari is Sr. Manager, Brand Storytelling Copy and Editorial for Roland. He lives in Seattle with his wife and dogs and enjoys the woods, rain, and coffee of his region.